ジンバル・スタビライザーは7年前からほとんど進化していない
衝撃を受けた “PILOTFLY H2” という名のジンバルと出会ってから、あっという間に7年もの歳月が経過しました。
絶えずジンバルと向き合い続けてきた私は、今もなおジンバルで理想的なカメラワークを極める、という課題に取り組んでいます。
今回は、日頃から私が考えていること、“現状のジンバルについての所感” をまとめてみたいと思います。
この7年、進化らしい進化は見られない
ジンバル・スタビライザー製品は、私の知る限り7年前からほとんど進化していないと言っても過言ではありません。
その理由は明白で、ジンバルとしての基本性能・運動性能は何ら変わっていないからです。
つまり、ジンバルとはピッチ・ロール・ヨーの三軸のブレを抑えることが目的ですが、大雑把に言うと実はどのメーカーもさほど大差ありません。
まだまだジンバル探しの旅は続く…
しかしながら、その三軸を駆動させるブラシレスモーターの制御機構については依然として進化がないことから、私は常に自分にあったジンバルを探し続けているというのが実情です。
正直、現在販売されているジンバルで満足のゆく出来の製品というのはなかなかありませんので、ジンバルがどうやったら思い通りに動いてくれるか?を考えて、苦手な挙動が始まるギリギリのラインでいかに撮影し続けるか?ということを常に想定しながら撮影するしかないのです。
したがって、ジンバルで狙ったカメラワークが不可能な場合、もしくは満足のゆくカットが撮れなかった場合は、そのカットは使えない・捨てざるを得ないと判断します。
また、完全にはジンバルの三軸で補正しきれなかったケースもありますし、状況によっては再現性のないカメラワークを強いられる場合も出てきますから、ジンバルってホント厄介なんですよ。
そういった場合は、編集・後補正で誤魔化す以外になく、この点を考慮するとジンバル・スタビライザーにはまだまだ伸びしろがあるハズなんです。
進化ではなく利便性向上に終始
が、彼らはそれに取り組む気が無いように見受けられます。
ジンバルもビジネスですから、商売として成り立たない製品を世に出しても仕方ないのですが、プロ目線から見るとどうしても詰めの甘さが残ってしまうんですよね。
ジンバルの基本性能・運動性能はほぼ現状維持で、他に目を向けさせて商売しているというのがジンバル・スタビライザー製品の現状ではないかと思います。
具体的には、以下のような機能を盛り込むことでコンシューマーの関心を得ようとしています。
・ペイロードの向上
・タッチスクリーン
・ジンバル運用の自動化
・ジンバルのロック機構
・カメラとの接続機能(RECコントロールはSONYのみとか…)
・フォローモードの追加(ほぼ使い途がない…)
など、これらの機能は確かに便利ではありますが、仮に無かったとしても安定化に寄与すること、また必ずしも良質な映像素材を残すことには直結しません。
本来進化させるべき基本性能・運動性能とは?
そのようなことよりも、歩いたり走ったりした際の明らかなピッチ・ロールの傾き(ジャイロセンサーのエラー)や、遅々として進まないドリフト現象を一刻も早く改善して欲しいんですよね。
私は都市景観を取りますので、不自然にピッチ・ロール・ヨーの傾きが顕在化すると水平垂直を出した状態での撮影が困難なため、結局のところ後補正に頼る以外にないんですね。
ロール軸が傾斜しているタイプは理想的とは言えない
また、ロール軸が45度前後傾いたジンバルはやはり使いにくいです。
特に、インバートモード(ジンバル逆さ吊り)に切り替えると、カメラの背面液晶が見えなくなりますから、私にとっては使い方を工夫する以外にありません。
加えて、ロール軸が傾いていると際どい角度でのカメラワークが困難になり、例えばフォローモードだけでは滑らかなフォローが不可能な場合が出てきます。
なぜそうなるのか?
私が思うのは、“現場のプロの声を聞いていない” という理由に尽きます。
真のプロフェッショナルが望む声を反映しているからこそ、日本の光学機器メーカーは極めて優秀なカメラ・レンズを開発・製造できるのであって、その声を拾い上げていればもっと優秀なジンバル・スタビライザーが存在していても良いはずです。
ぶっちゃけて言ってしまえば、私の使っているジンバルも他に選択肢がないのでやむを得ず使っているということもあります。
本当は、ガチで日本のメーカーに高品質な国産ジンバルを開発・製造してもらいたいところなのですが、どこも作る気などなさそうなのが非常に残念ではあります。
本当に必要としている現場のプロに、本当に必要な高性能ジンバルを届けて欲しい、いつもそう思っています。
多少高くてもやむを得ないと思いますし、現場のプロこそ完璧なジンバルを必要としているはずです。
もし、国産ジンバルを作りたいというメーカーさんがおられたら、開発に協力させていただきたいと思っているほどです。
で、結論。
ジンバルっぽい映像を撮るなら、“POCKET 3” が一番オススメです。
これについては、また別途BLOGにまとめますね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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撮影・執筆者

ジンバル撮影/指導/講師
豊富な実践経験から得たブレのないジンバル撮影テクニックを独自の理論に落とし込み、専門家ならではの視点でジンバルの正しい使い方を指導しています。2019年より自らが主宰するジンバル講習は日本で唯一。
講師業の傍ら、ジンバルで捉えた映像素材・ストック動画を撮影中。撮影対象は、主に都市景観:ビル街・建造物・商業施設など。詳しくは、映像素材・ストック動画のページをご参照ください。
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